TRONイネーブルウェアシンポジウム28th

いま企業ができること

2015 年12 月12 日(土) 13:30 ~ 16:30(13:00 受付開始)
東京ミッドタウン カンファレンス(Midtown Tower 4F/Room 7)

  • 主 催
    トロンフォーラム/TRONイネーブルウェア研究会
  • 共 催
    東京大学大学院情報学環 ユビキタス情報社会基盤研究センター
  • 特別協賛
    イーソル株式会社/イマジネーションテクノロジーズ株式会社/サトーホールディングス株式会社/株式会社ソシオネクスト/東京ミッドタウン/日本電気株式会社/日本マイクロソフト株式会社/パーソナルメディア株式会社/株式会社パスコ/富士通株式会社/株式会社 的/明光電子株式会社/矢崎総業株式会社/ユーシーテクノロジ株式会社/株式会社横須賀テレコムリサーチパーク/株式会社LIXIL
13:00受付開始
13:30〜14:30基調講演「いま企業ができること」
坂村 健
TRON イネーブルウェア研究会 会長
YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所 所長
東京大学大学院 情報学環 教授
14:30〜14:50休憩
14:50〜16:30パネルディスカッション 

登壇者
大島 友子
日本マイクロソフト株式会社 技術統括室 プリンシパルアドバイザー
高村 明良
全国高等学校長協会 入試点訳事業部 専務理事
坂村 健
TRON イネーブルウェア研究会 会長/ YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所 所長/東京大学大学院 情報学環 教授
16:30閉会

基調講演

いま企業ができること

坂村 健
TRON イネーブルウェア研究会 会長
YRP ユビキタス・ネットワーキング研究所 所長
東京大学大学院 情報学環 教授

車いす利用や視覚が不自由な方が独力で移動することを助けるための技術が「自律移動支援技術」だ。目的地までの経路だけでなく、段差・階段や、エレベータ/ エスカレータ・多目的トイレの場所に関するデータベースをフル活用し、リアルタイムに適切に移動の支援を行う。

TRON プロジェクトも、これまで多くの提言、仕様策定を行い、実証実験プロジェクトを主導し成果を挙げてきた。技術的にはハードウェアとソフトウェアの両面から、実用性の高い自律移動支援の実現が可能になっている。オープンデータによる多くの担い手によるデータベース( データウェア) の整備の仕組みも確立しつつある。

これまでのこうした取り組みは、主に、一般道路や駅構内を対象に実施されてきた。そこで次の課題となるのが建物内での移動支援だ。ショッピングセンターなどの商業施設や社員の職場になる企業のオフィス建物が含まれる。今までの成果を利用し、民間企業の主導によりさらに広範囲な自律移動支援を目指す必要がある。

オフィス内での自律移動支援に取り組む民間企業も現れはじめている。視覚に障碍がある社員でも同僚の手を借りずにオフィス内の目的の部屋に行くことができる。また、初めて訪れるオフィスであっても来客スペース内の自由な移動が可能になる。

今年のTEPS では、TRON プロジェクトの技術を使って民間企業がどう課題に取り組めばよいかをテーマとする。パネルディスカッションを通していま企業ができる自律移動支援の取り組みを論じる。

登壇者

障碍のある人の就労とテクノロジー

大島 友子
日本マイクロソフト株式会社
技術統括室 プリンシパルアドバイザー

マイクロソフトでは、アクセシビリティ機能拡充など障碍のある人に向けた長年の活動に加え、全社的にワークスタイル変革を実施し、ダイバーシティついても経営戦略として積極的に取り組んでいる。それらの事例に加え、障碍のある人の就労に関する新たな取り組みを含めてご紹介する。

ビル内における情報取得型の自律移動支援システムのあり方

高村 明良
全国高等学校長協会
入試点訳事業部 専務理事

視覚に障がいのある人の自律移動支援は、新技術の活用によってこれまでの誘導型に加えて、利用者の目的に応じた情報取得型が実用化しつつある。しかし、情報を取得するために使われる技術によって、位置情報の精度や周辺情報の内容が異なるため、場所や情報の種類に応じて技術を選択してシステムを構築する段階である。今回は、特にビル内における情報取得型のシステムのあり方とそれを使う利用者に必要とされるスキルについて考えていきたい。

TRONイネーブルウェアとTEPS

TRON プロジェクト(プロジェクトリーダー:坂村健)が実現している「どこでもコンピュータ」には、すべての人がコンピュータを使えることが重要です。年齢や身体のさまざまな障碍を問わず、あらゆる人を含めて考えなければなりません。

TRON プロジェクトで設計しているコンピュータシステムは、真にすべての人が使えるものとするための「TRON イネーブルウェア仕様」を定め、高齢者や障碍者への対応をその基本設計の段階から考慮しています。TRON イネーブルウェア仕様は、1987 年から、障碍者の方々にも参加をいただいて、「TRON イネーブルウェア研究会」の場で検討された成果です。

「TRON イネーブルウェア研究会」(会長:坂村健)は1987年に組織されました。イネーブルウェア仕様の策定・実装のみにとどまらず、イネーブルウェアの理念の普及活動、障碍者とコンピュータのためのシンポジウムTEPS の開催などの活動を通して、障碍者の生活向上・社会参加をサポートするための活動を行っています。

TEPS は、「TRON Electronic Prosthetics Symposium」の略です。「TRON イネーブルウェアシンポジウム」を短く「TEPS(テップス)」とよぶこともあります。TRON 電子補綴技術(TRON Electronic Prosthetics: TEP)は、「イネーブルウェア」と同じ意味を持つ言葉です。「補綴(ほてい/ほてつ)術:Prosthetics」という言葉は、従来、人工臓器や義手・義足などの開発研究を行う医学の一分野を指した言葉です。近代の技術革新、特にコンピュータ技術の発達は、このような従来の補綴具の領域を超える新しい補綴機器の開発を可能としています。そこで、TRON ではこの新しい概念を表すために、「補綴:Prosthetics」という従来の言葉をそのまま使用し、「TRON 電子補綴技術」とよんでいます。

しかし「補綴:Prosthetics」という言葉は、正確であっても多くの人にとってなじみの薄い専門用語です。そこで、「イネーブルウェア:Enableware」という新語も作り、これを広く使用しています。障碍者や高齢者など、何かが「出来なくなっている人びと:Disabled Persons」にとって、その何かを「可能にする:Enable」ためのハードウェア群・ソフトウェア群を指します。

これまでのTEPSのあゆみ

TEPS’88 1988年 7月  
TEPS’90 1990年 3月  
TEPS’92 1992年12月 電脳都市とイネーブルウェア
TEPS’93 1993年12月 イネーブルウェアとどこでもコンピュータの世界
TEPS’94 1994年12月 障碍者を助けるコンピュータネットワーク
TEPS’95 1995年12月 テクノロジーは障碍者に何を可能にしてくれるか?
TEPS’96 1996年12月 大学キャンパスにおける障碍者サポート
TEPS’97 1997年12月 バリアを越えて楽しむエンターテイメント
TEPS’99 1999年 3月 電子商取引時代のイネーブルウェア
TEPS2000 1999年12月 情報機器のためのイネーブルウェアデザイン
TEPS2001 2000年12月 バリアフリーに活かす次世代携帯電話
TEPS2002 2001年12月 どこでもコンピュータ時代のイネーブルウェア
TEPS2003 2002年12月 ユビキタス・コンピューティングとイネーブルウェア
TEPS2004 2003年12月 ユビキタス・コンピューティングとイネーブルウェア(Part2)
~私たちは今、何ができるのか~
TEPS2005 2004年12月 だれでもできるためのユビキタス
TEPS2006 2005年12月 ユビキタス社会基盤のユニバーサルデザイン
TEPS2007 2006年12月 公共交通のユニバーサルデザイン
TEPS2008 2007年12月 場所情報システムのユニバーサルデザイン
~自律移動支援に求められるサービス・実験結果の検証~
TEPS2009 2008年12月 ユビキタス・コンピューティングにおけるユニバーサルデザイン
TEPS2010 2009年12月 ユビキタス社会におけるユニバーサルデザイン
TEPS2011 2010年12月 バリアフリー 2.0
TEPS2011 夏1 2011年7月 3.11以降のバリアフリーの後退を考える
TEPS2011 夏2 2011年7月 認知症へのテクノロジー支援を考える
TEPS2O12 2011年12月 緊急時の情報伝達のユニバーサルデザイン
TEPS2O13 2012年12月 障碍者、高齢者を支援する最新デジタル技術
TEPS2O14 2013年12月 オープンアプローチでバリアフリーマップをつくる
TEPS27th 2014年12月 オープンデータでバリアフリーを支援する
TEPS28th 2015年12月 いま企業ができること